前回のWGでは、戸建て住宅の消費者に対する利益供与の上限額を2万円、賃貸集合住宅オーナー等向けは戸あたり2,500円という事務局案でしたが、
・戸建て住宅の一般消費者:2万円
・賃貸住宅のオーナー等(建築会社、管理会社、仲介会社、ハウスメーカー含む):「正常な商慣習を超えた利益の定義」に当てはまる経済的利益は一切認めない
に変更されました。
「正常な商慣習を超えた利益の定義」では、
– 金銭の給付(紹介料、期間を定めた割引料金を含む)
– 物品の供与(ただし、社会通念上許容される儀礼的な物品供与、例えばお中元・お歳暮等は除く)
– 保守等の役務の無償提供(例:フリーメンテナンス)
– 無償の使用貸借(LPガスボンベ置き場の賃借料を含む)
– その他名目のいかんを問わず供与される経済的利益
なお、LPガス事業者の切替え営業を代行する事業者(いわゆる「ブローカー」など)を通じての、戸建て一般消費者やオーナー等への金銭の給付等も含まれるものとする。
が列挙されました。
賃貸集合住宅オーナー等向けにおいては、実質的に0円という定量基準の設定に進化したわけですが、お中元やお歳暮は対象外とのこと。まずこの部分については、橘川先生が言われたように、『正常な商慣習の定義』に変えて、
・社会通念上許容される儀礼的な物品提供・例えばお中元やお歳暮等
とし、「ブローカーを通じての金銭の給付等も含めてあらゆる利益供与を禁止とする」-に整理した方がスッキリするのではないか、というのがまず一つ目の感想です。
二つ目は、戸建ての一般消費者向けは、なぜ2万円のまま残したのか、というところです。そもそもこのWGは消費者被害の多い賃貸集合住宅向けを中心に議論を進めてきたわけで、あまり被害実態のない戸建て消費者への軽度の利益供与を認めるような方向というのはどうなんだろうという疑問が残ります。ここは、座長も変更の意を含むような締め方をされていましたが、消費者代表の方からも意見が出たように、「集合もやるなら戸建ても一切なしの方向でやるべき」だと強く思います。
また、もう一つの「切替制限に係る水準」については、『契約期間の定めは設けないが、解約には違約金などの不利益な負担を課さない』という方向で整理されましたので、長期間契約の設定で、途中解約時に高額な違約金を支払わせる契約は出来なくなります。事務局資料にもありましたように、15年という長期契約で、途中で解約したら数十万円の違約金という契約事例がありましたので、こちらも方向性としてはスッキリした整理になったかと思います。
私が感じている本件の最大の課題-それは、『実効性の確保』、この一言に尽きます。いくら文言で整理して通達したとて、地方の経済産業局を含む規制当局による、「しっかりとした取り締まり」が実行され、かつ、それが見える化されなければ、「絵に描いた餅」に終わる懸念が拭えません。
一部大手事業者により賃貸集合住宅オーナーへの紹介料については、秘密保持契約を結んでいる例も聞こえてきます。つまり、「紹介料を貰っていることを他に漏らしたら、紹介料は払いませんよ」と、こういう契約を結ばれてしまいますと、規制当局からも利益供与の実態が見えなくなります。その場合、当該企業の賃貸向けのガス料金の高低のバラツキや、戸建て料金との違いを、どう調べて突き止めていくか、規制当局の高い技量が問われてくると思います。
それにしても、前回までの事務局案と全く異なる案が唐突に出てきて、それで決まるという議論のプロセスには、少し頭を傾げざるを得ません。近いうちに、真相を確認したいと思います。
