
ジャパンガスエナジー時代に、「電気の話を聞かせてくれ」との声掛けがあり、大阪で会ったのが切っ掛けで、以来、足掛け10年以上のお付き合いが続いている。
とにかく新しいことにチャレンジし続けるスピリッツと行動力が半端ではなく、所在する豊岡市からも一目置かれている。
昨日、沖縄にいたと思えば、今日は北海道。新たな道筋を探すために全国を飛び回る-そんな木村さんに、今の取り組みと今後の方向性について、お話を伺った。
※以下、敬称略
【取材日:2026年9月8日】
営農型太陽光のパイオニア、日本で初の補助金案件
境 野:今日、木村さんのところにお邪魔したのは、昔からお付き合いさせて頂いている中で、次から次へと新しいことにチャレンジしているところが凄いなと。営農太陽光も他社に先駆けてやられていましたね。
木 村:米穀の会社ですから、その軸からは逸れないようにしたいと、そして食とエネルギーをどう考えていくかという中で、たまたまそういったものに出会ったのがきっかけです。当時は誰もやっていなかったので、そこに特化していきたかったというのが大きいと思います。
境 野:補助金を使っての太陽光は、日本で初めてですよね。
木 村:環境省の補助金を利用してやったんですね。一号案件というのを、私の会社とHISのハウステンボスさんで取りました。
境 野:凄いですね、それ。
木 村:結構早い時にやりましたね。ほとんど稲作ではやっていませんでしたが、私は稲作に拘りました。日本の耕作面積の約65%が稲作ですから、稲作でやらないと多分広がらないだろうと思いました。
境 野:その後、豊岡市とも一緒にやっておられました。
木 村:我々の豊岡市も農薬を使わない農業をやっている町なので、クリーンなエネルギーを使いたいということで、境野さんが居られたので、イーレックスさんにお世話になりました。
境 野:そうでしたね、西村君と一緒になって。
木 村:農業って、繁忙期は乾燥調整施設だとかで非常に電気を使いますけど、農業をしない時期は余ってしまうので、それを域内で回したかった。
自分たちの地域で出来たエネルギーを自分たちの地域で消費するという形を作り、豊岡市も「ではやりましょう」ということで。

境 野:木村さんが凄いなと思うのは、太陽光については本当にパイオニアなわけですよ。 豊岡市にも頼られていると思います。
木 村:小さな会社ですし、とにかく形を作るということが大事だなというのがありました。そんな中、2020年ぐらいだったと思いますが、我々のやっている取り組みがアウトドアのパタゴニアの目に留まったんですね。
当時トランプ大統領の1期目の時に、パリ協定から離脱するだとか、Appleが再エネの電気でなければ認めないとか、そういう流れの中、我々の営農型太陽光に興味があるということで、営農型の太陽光の電気を、関西のパタゴニアの直営店に流しています。
関西の直営店、京都1店舗、大阪2店舗、神戸1店舗に、順次豊岡で出来た電気を流し続ける予定です。豊岡市としても凄く良い宣伝になりますし、パタゴニアの方もムービーも作ってもらいましたし、それを世界に対して発信もしておられる。地域にとっては凄く良かったなと思いますね。
廃校の活用に農業生産-スマート農業の実現に向けて走り出す
境 野:やはり地域愛というのが根底にあると思いますが、その延長線上のひとつで、私が思い出に残っていますのが廃校の活用です。あれはどういうきっかけでした?
木 村:コロナ初年度で私が社長を引き継いだ時に、知り合いの社長からポッと私に舞い込んできたんですよ。
「こんなところで廃校出てるよ、綺麗な学校だよ」と。豊岡市は兵庫県の北部で、夏は暑くて、冬は雪がたくさん降りますし、神戸か大阪から来ると2時間ほど掛かる。
我々のやりたいことをもっとこう都市部に近いところで発信できる場所が欲しいなと思っていました。
農業を簡素化するスマート農業というものに凄く興味があり、これをどうにか広められる場所がないかなと思っていたところ、その廃校話があったので、そこを拠点にやってみようと。
ちょうど兵庫県の真ん中ですし、真ん中であれば兵庫県全体から誰でも来れるなと。そして、そこでプレゼンをやって、なぜか私の話に皆さん騙されて笑、弊社がそこを使う権利を貰いました。
境 野:その発想もさることながら、行動力が凄い。
木 村:その廃校をうまく利用してもらって、その地域に人を呼び込んでくれというのが行政の狙いじゃないですか。
何かしないといけないなということで、たまたまその時コロナ禍でしたから、キャンプ事業が凄く流行っていました。
廃校を利用してキャンプ事業をやって、農業体験ができる施設を作れば、こういう先進的な農業があるんだというのを、小さい子から年配の方まで知ってもらえます。

スマート農業の展示施設、体験施設兼キャンプ場というのをやったんですが、当然、投資が必要になります。たまたま国がコロナのいわゆる事業再構築補助金というのを出していて、そこで弊社の子会社と関連会社と2社で応募して、2社とも通ったんですね。
境 野:やってみるものですね。あらゆる窓口というか、きっかけを必ずつかまえてやり遂げるところが本当に凄い。
木村さんはお会いした時から、「LPガス業界は今のままじゃダメなんだ、LPガスだけじゃダメになるんだ」と、強い問題意識を持たれていました。今はどんな方向に目線を向けていますか?
木 村: 農業生産ですね。農業は儲からない、苦しい、もう大変だと、そこをスマート農業で変えていきたい。
我々も推し進めてもう約10年ぐらいになるんですけど、そういった農業を取り入れれば、若者も入ってきてくれるだろうということでやっていまして、お陰様で今、全国に仲間が出来てきました。
去年、農業法人も買収して本格的に農業生産に入っています。まだまだ今は耕作面積10ヘクタールぐらいしかやれていませんが、自分たちでやることが全てではありません。
我々と一緒になってこういうやり方をやりませんかという仲間を増やすことが大事だと考えています。その仲間と色々な地域で作っていくということを僕らの最終目標にしています。
境 野:素晴らしいですね。 日本はエネルギー自給率ではOECD38ヵ国中37位で16.7%しかありません。
食料自給率もカロリーベースで世界一低い。その意味では、エネルギーも貧しい、食料も実は貧しい、そこを何とかしていかなければという、大きな理想があるわけですね。
そこに本当に地に足をつけて、まず地元から仲間を集めて広げていこうという段階に入ったんですね。
木 村:我々は麦、大豆、米、穀物類が僕らはノウハウとして一番持っています。稲作ですと、一人で30ヘクタールができる、30ヘクタールを一人でやると大体、年収で1,000万という試算も出てきました。
境 野:大きいですね、それ。 AIの進化によってホワイトカラーもどんどん激減していくのが目に見えています。
その点、アメリカは先行指標になっていまして、ブルーカラーの給料が上がっているんですよね。 体を動かすAIでは出来ない仕事を人間がやって、それに対する対価を増やしていくというのは王道だと思いますね、これから。
木 村:地方はとにかく土地がありますし、色々なポテンシャルはあると思っています。エネルギーだけで食べていけたらいいんですけど、そういう時代ではないので、そこを総合的にどうやっていくかということを、常日頃楽しみながらやっていっています。
境 野:その気持ちと行動力、ガス事業者にとって良い刺激になると思います。本日は有難うございました。
以 上
