
出会いから10年以上、もうすぐ40歳になられる原さん。
常に前向きで「店を良くしていこう」、「業界を明るくしていこう」という姿勢に好感が持てる好青年。
過去に青年部会長も務めるなど、協会の活動にも積極的で、真剣な討議をしていたことが強く記憶に残っている。
日本のLPガス事業者はその8割までが1,000軒未満の小規模事業者であり、地域に根付いた家族経営の店が多い。
今回は原さんに、小規模事業者としての在り方を中心にお伺いした。
※以下、敬称略
【取材日:2026年8月5日】
自分の子が店を引き継ぐ時、胸を張って引き継げるような会社にしていきたい
境 野:私が今回、原さんと対談したいなと思ったのは、お会いした時から非常に目が輝いていて、業界に対する意識も高い人だと。原さんは今、この業界をどう見ていますか?
原:法改正があったことは凄くいいことです。それを真摯に受け止めなければいけないはずなのに、ガス事業者の多くが本当にちゃんと受け止めているのかという風に感じています。
オーナーさんへ覚書もなくお金を渡しているとか、いまだに聞こえてきます。ガス料金に関しても公表している事業者はやはり少ない。
加えて、実際に公表している金額と売り込み価格に乖離があるという部分。八百屋さんで例えれば、キャベツの店頭価格が200円とします。
あるお客さんにはレジで値引きして100円で販売するけど、あるお客さんには店頭価格が間違っていたと250円で販売したりとかということが、ガス業界では往々にしてあるわけで、それは本当に良くないことだと思います。国が正しなさいよと言ってかなりの日数が経っているのに、です。
境 野:アドバイザリーグループ委員として行政と一緒にやらせて頂いた中で、この前のワーキングでも出たのでお話しますと、利益供与は改正省令施行後も残念ながら一部大手事業者筆頭に続いています。
大手ほど襟を正さなければいけないのに、彼らが率先してやっているようなところもある。そんな中で、原さんは周りの良くない影響は受けずに、しっかり守られていますよね。
原:はい。自主取組宣言もホームページに公表させてもらっていますし、法改正があった時には全てのオーナーさんを回ってしっかりお話させて頂きました。
法改正によってこれからは給湯器などの投資はできませんと、みなさんご理解して頂けました。ガス事業者としてしっかり法律を守る、そのことをオーナーさんへどこまでしっかり伝えているか、そこの差が事業者であるように思いますね。

境 野:ガス業界が慣習的に普通にやってきてしまったところがあって、それをオーナーさんたちも「これでいいのかな?」という疑問を抱いていた、善意のある方が多かったということですよね。
ただ一方、お金をよこさないとガスを替えるぞとか、秘密保持契約を結んで水面下で賄賂を受け取っているところもある。そういうところはどう思いますか?
原:法改正があった後も、抜け道を探すガス事業者、利益を要求するオーナーさん、不動産会社はあるだろうなとは思っていました。
ただ私は、どんな方へもしっかり説明できるような会社経営をしていきたいですし、我が子が原プロパンを継ぎたいと言ってくれた時に胸を張って引き継げる、20年、30年後も生き残れるような会社にしていきたいという風に思っています。
境 野:そういう気持ちを、他の多くの事業者にも持ってもらいたいですよね。原さんのところが、善意のあるオーナーの方々が多いのは、小規模だからこその地域密着で作り上げてきた信頼が土台になっていると思っています。
原:高圧ガス販売営業許可を取ったのが昭和63年でだいぶ後発だったんですね。卸の会社さんと契約するまで凄く苦労したという話を亡くなった父から聞いています。
そうやって祖父と父とが一生懸命、地元と関わりながらつないできた会社ですから。オーナー様も、むしろ私のことを心配してくれるような人たちばかりで、祖父と父には感謝しかありません。
小規模事業者の最大の武器は小回りが利くことと、きめ細かいサービス
境 野:今、直売のお客さんは何軒ぐらいですか。
原:実働ですと約700軒です。
境 野:日本のプロパンガス事業者が1万5千弱あって、82.5%が1,000軒未満です。
やはり、そういう小さい事業者が地域に根付いているからこそ、きめ細かいサービスがあって成り立ってきたと思っています。今の経営上の課題はどんなものがありますか?
原:母と妻が事務、経理をしていまして、検針員さんが一人。私を入れて4名で経営しているんですが、誰かが倒れてしまったりすると、経営は大変になってくると思います。
特に外で仕事をしている私が倒れたりすると本当に立ちいかなくなるかと。
境 野:小規模事業者の経営の最大の課題はそこにあるんですね。原さんはまだお若いですが、高齢の方がお亡くなりになって、卸に糾合されていく、そんな流れがありますよね。
原:プロパンガスだけを商いにしてやっていますと、急激な拡大というのは難しい。ちょうど今の会社規模が、従業員をこれ以上抱えなくてもほぼ家族だけで回せていける感じですね。
境 野:そういう意味では、家族で回せていける規模の会社が多いという理由もわかります。その中で、何か他のことをやっていくというような意図は今おありですか。
原:徳島県にある鳴門ガスさんがされている即湯サービスが凄くいい商品サービスで、数年前にお伺いして取り入れさせてもらっています。
プロパンガス事業者の最大の武器は、何かあればすぐに駆け付けられるところです。給湯設備が壊れた時にすぐ駆けつけてお湯を出せるというのは、他のエネルギーでは難しい。

灯油も電気も難しい。設備が大きくなってしまいますので。これをきっかけに新しいお客さんとのお取引も始まっています。
境 野:実績も出てきたんですね。
原:はい。先日オール電化からプロパンに切り替えて頂いたお客様は、オール電化の方が安いというイメージを持たれていました。
そのお客様は昼間にエアコンを使っていまして、私たちと同年代、40代のご夫婦でしたが、かなり昼間の料金が高い。
実際シミュレーションしてみますと、毎月ガスを使った方が千円程度安くなったという実績があります。あともう一つ喜ばれたのは、シャワーの水圧がエコキュートと段違いだと、これはご主人が凄く喜ばれていましたね。
境 野:水圧の違いを、私にも分かりやすく説明して頂けますか?
原:ガスの給湯器はそのまま水道の圧です。しかし、エコキュートはタンクに貯めて、貯めたお湯を中にあるポンプを使ってお湯を届けます。そのポンプというのが、水道の直圧に比べるとだいぶ弱いんですね。
特に男性は水圧があった方が気持ちよく頭が洗えるということで、ガスの給湯器を高く評価して頂いています。
境 野:なるほど、そういうPRをもっとすべきですね、LPガス業界として。あの即湯サービスのいいところは、地元の中小事業者だからすぐに行けるという強み、それを活かして欲しいですね。
エコキュートを取り換えてくれと大手電力に電話したら、2週間ぐらい平気で掛かるんですよ。
原:そうですね。即湯サービスは乾太君とあわせて、プロパンガス業界が推していくべき商品じゃないかなと思っています。
境 野:乾太君って、リンナイさんが特にマーケティングをせずに、SNSの口コミで拡がっていったんですよね。
原:オール電化の家庭でも、乾太君だけ入れたいという声もあります。
境 野:ガスの需要増になりますね。ドンドンやって欲しいですね。
原:それと他の中小事業者にもう一つ勧めたいのが、生成AIです。私もここ最近なんです、使い出したのは。
とにかく優秀で、文章の解析だとかレポートを作成したりすることに凄く長けている。多くの事務を肩代わりしてくれています。
中小企業の経営者こそAIを使って欲しい。ウチの会社規模ではコンサルは雇えませんが、同じ効果が得られると思っています。
境 野:いいですね、商慣行と即湯サービスでの地域に密着の話、そしてAI。これで中小事業者ほど助かる、生きていけるんだと。
今日は中小事業者の方々に希望を持って頂ける話をたくさん頂きました。有難うございます。これからも地域のために、事業を続けていって頂きたいと思います。

