
1956年生まれ、愛知県出身。
2015年4月、ENEOSからENEOSグローブを経て転籍、北海道エナジティック入社、取締役社長付
2024年1月 代表取締役社長に就任、6月から北海道LPガス協会副会長
新日本石油(現ENEOS)時代に燃料電池事業で苦楽を共にした戦友。
10歳以上離れているが馬が合い、当時は毎日のように飲みに行っていた。元売りから北海道エナジティックに移り、今は社長となった尾関豪さんに、北海道ならではのエネルギー実情を聞いた。
※敬称略
【取材日:2026年5月8日】
北海道ならではの特殊事情、価格が高いのには理由がある
境 野:尾関さん、ご無沙汰しています。やはり今、最初に聞かなければならないのは、これだけ中東の影響が出ていて、私なんかナフサ不足で騒がれて(笑)、どうですか?北海道的には今、何が起こっていますか。
尾 関:一番分かり易いのは重油の需給でしょうか。例えば役所関係の入札は今まで3月に上期分を決めていましたが、それでは不成立になってしまうので、単月入札に変えたのですが、それでもなお成立しない。確保できる見通しがありませんから、落札しても。
境 野:重油のスポットが5割上がったと、この前の日経に出ていましたが、やはり出ていないのですね。
尾 関:5割で買えたらまだいい方ですね。LPガスはご存じのようにホルムズ海峡は数%しか通っていませんから、値段は上がっていますが、量は何とか確保できています。
境 野:ほとんどがアメリカ産ですからね。
尾 関:もう一つ問題なのはシンナーです。全く入って来ない。これがないと容器検査ができません。
耐圧切れは法令違反になりますから出来ない。そこをどうするか。業界全体で何万本あるのか分かりませんが、ネーム塗装にシンナーを使うわけです。
シンナーが一番深刻かもしれません。不足は外の世界のことだと思っていたら、足元で吹き付け塗装ができないじゃないかと。
境 野:そうですよね、業界全体の課題ですね。
尾 関:以前配送会社を変えた時にこんなことがありました。配送会社を変えるとボンベを変えなければいけません。ネームが入っていますから。
大量に変えると間に合わないので、ボンベに大きなシールを貼る。そういう応急対応を行政にしてもらったことがありますので、お願いをしに行かなければいけないと思っています。
ただ、これはもうLPガス業界全体の話になりますからね。
境 野:そうですよね、業界全体の課題ですね。本当にこんな状況だから、LPガスの保安室あたりがすぐに対策を出して欲しいところですね。
尾 関:新品を買っても吹き付け塗装はしなければいけませんからね。
だから、シールもそんなに簡単に作れるかどうか分かりませんが、知恵としては色々な知恵が出てくるはずなんです。そういった知恵は、やっぱり業界で出していくしかないと思っています。

境 野:有難うございます。ところで、北海道のLPガス事情についてお聞きしたいと思いますが、価格が本州に比べて高いですよね?
尾 関:あまり知られていないかもしれませんが、北海道は輸入基地がないので、本州からの輸送費と受け入れ基地コストが掛かっているんです。
仕入れの段階で既に高い。加えて、消費原単位が少な過ぎるんですよ。月に2、3キロしか使わないのに、設備は本州と同じ。
境 野:なるほど、だから基本料金も従量料金も北海道だけ別立てみたいな感じになっているんですね。
尾 関:もう一つ大きな理由がありまして、札幌の中心地は都市ガスですから、我々は周辺部でやるしかない。
周辺部となりますと、北海道の地域特性で隣まで遠いんですよ、帯広なんか隣まで車で15分とかありますからね。
境 野:北海道だけはちょっと地域特性が特別ですね。
尾 関:加えて雪が降ると配送できなくなりますし。
境 野:と言いますと?
尾 関:除雪が行き届いてないところですと、小道に入ると配送車がスタックして帰ってこれなくなります。
助けに行った車がまたスタックして帰ってこないということがありました。基本、配送車は四駆のトラックですよ。だから、ボンベを雪道の上を引きずって交換しに行きました。
雪が降るとボンベが埋まってしまうこともあり、掘らないといけない。充填工場に持ってきたボンベが雪だらけで融雪装置で溶かさなければなりません。
大変なんですよ。こっち(北海道)の人たちは当たり前だと思っているんですが、本州出身の私は、当初は全く想像できない配送でした。
境 野:本州より高くて当然ですね。でも逆にその意味では、お客さんがコストを受け入れているわけですよね。「こんな苦労していつもありがとう」と。
尾 関:燃料費も高騰していますし、使用量が少ない。本州とは桁が違う。一方で設備だけは同じ。値段が高いのには理由がちゃんとあるわけです。
少子高齢化、重要が減少していく中で、一番の差異化はラストワンマイルの活かし方
境 野:それと、以前聞いた話の中で印象に残っているのが、少子高齢化で戸建てが減っていると。
尾 関:戸建てが減って老人ホームが増えているんですよ。この10年で戸建ては1万軒ほど減りました。
これからさらに加速しそうです。加えて販売店も減っていますが、こちらも深刻で担い手がいない。
離島の販売店は我々としても買えません。人が置けませんからね。これからどうなるのかと思います。
境 野:その意味では本州以上に深刻ですね。
尾 関:過疎化が酷いので、供給の組合を作り、各社がローテーションで回す必要があるかもしれません。
独禁法との兼ね合いで難しい部分ではあるものの、行政が入ってくれないとできません。ガスの供給貧者を出さないためにも、検討課題だと思いますね。
境 野:基本的なことをお聞きしますが、北海道だと灯油は暖房で使って、LPガスは?
尾 関:煮炊きぐらいですね、台所のみ。お風呂も灯油のところが多い。だから月に2、3キロしか使わないんですよ。
境 野:なるほど。灯油メインなんですね、家庭のエネルギーは。

尾 関:北海道で250万㎘の需要があり、そのうち1割の25万㎘を当社が供給しています。
境 野:凄いですね、それ。
尾 関:灯油がメイン、LPガスの消費が少ない。ゆえに本州からの参入が少ないんです。投資しても割に合いませんから。
私はエネルギーはベストミックスでいいと思っているんですよ、北海道なら灯油メイン、LPガスがサブと。
境 野:今、尾関さんがおっしゃっていたベストミックスというのを、前々から何度もお聞きして、これはいいやり方だなと思っているんですが、売れるものは何でも売るという、そのスタンスは今も変わっていませんか?
尾 関:変わりません。これは益弘さん(当時の尾関さん、境野の上司であった山口益弘さん)に言われたことですが、「ラストワンマイルをガス屋は持っている」と、当社もそうなんだと。そのラストワンマイルを持っていて、そこに何を流すかはお客さんと接点を深めればおのずと出てくるんですよね。
これのいいところは、自分が動いたら動いた分だけモノが売れる。だから努力のしがいがあるんです。
境 野:とてもいい話ですね。
尾 関:他所と差異化というか特殊化ができる。究極的な差異化はセールスマンですね。
信頼関係を作っておけば、何でも電話が来ます。「お宅、これはないの?」と。チラシに書かなくても「お宅、こんなの扱ってたの?持ってきてよ」と。
境 野:会社の方針として、ラストワンマイルに取り組んでおられる?
尾 関:それが一番の武器ですから。他所に入り込まれない。ずっとやっていきたいですね。
以 上


