中部電力が10月29日に発表した巨額損失の原因は、浜岡原子力発電所の再稼働をめぐる不適切な審査対応によって、原発への巨額投資を将来回収できる見通しが立たなくなったことです。
加えて、中東情勢の悪化による燃料価格の高騰が、電力販売事業の収益を圧迫しています。つまり、「原発問題による巨額の特別損失」と「燃料高騰による本業の収益悪化」という二つの問題が重なっています。
純利益1,600億円から▲2,150億円へ下方修正、この最大の原因は浜岡原発の問題です。
≪経緯≫
1.浜岡原発3・4号機の再稼働に向けた安全審査で、基準地震動の策定に関する不適切事案が発覚。
2.中部電力は審査資料の信頼性を維持できないと判断し、2026年9月25日に再稼働に必要な許可申請などを取り下げ。
3.再稼働がいつになるか分からず、安全対策工事費がさらに増える可能性も生じた。
4.その結果、原発設備や核燃料の価値を会計上、大幅に引き下げる必要が生じた。
今回、中部電力は原子力発電事業の対象固定資産3,049億円を全額減損処理しています。
| 特別損失の内訳 | 金額 |
|---|---|
| 原発設備などの減損損失 | 3,049億円 |
| 核燃料の評価損 | 653億円 |
| 合計(端数処理後) | 3,703億円 |
| 通期見込み | 約3,800億円 |
これは3,800億円の現金が今回一度に流出するという意味ではありません。過去に投資した設備などの価値を、会計上損失として認識するものです。
もう一つの問題は燃料価格高騰。
原発問題とは別に、中部電力ミライズの電力販売事業も厳しい状況です。中部電力は、原油CIF価格の年間想定を90ドルから105ドルへ引き上げました。
原油やLNGの調達コストが上がると、電力会社が購入する電気のコストも上昇します。ところが、燃料費調整制度や販売契約の条件によっては、上昇したコストをすぐに電気料金へ転嫁できません。その結果、電気を販売するほど利益が圧迫される局面が生じます。
今回、JERAの収支改善が見込まれる一方、ミライズの収支悪化などにより、経常利益予想も1,850億円から1,100億円へ750億円引き下げられました。
要するに、今回の決算を一言で表現すれば、「浜岡原発の安全審査における不適切事案が約3,800億円の特別損失につながり、さらに中東情勢の悪化による燃料高騰が電力販売事業の利益を圧迫した」ということです。
