貴重な対談とて、記録しておかない限り、その時その場で読まれて終わってしまうもの。
私がこれまで対談頂いた方々との記録を、新たな解釈や当時の背景などを加えながらここに残し、事業者の方々の今後の糧の一端にして頂ければと思う。なお、編集にあたっては、プロパン産業新聞を発刊している石油産業新聞社に、全面的なご協力を頂いた。合わせてここに感謝申し上げたい。
プロパン産業新聞 新春特別対談〈2026年1月1日発刊〉
北海道生活協同組合連合会 事務局/神奈川県消費者の会連絡会 理事 川原敬伸氏と
「消費者運動を起点としたLPガス商慣行是正の展開」

消費者の声が導いた商慣行大転換-地道な調査が突破口に
境野 改めて川原さん、北海道生協の存在が今回の「商慣行是正」の起爆剤になったと私は感じています。そして、業界を震撼させたのが、2021年12月30日の朝日新聞一面の記事でした。LPガス業界もすごくザワザワして、「なんで突然こんなのが出たんだ」と、「経済産業省のリークじゃないか」みたいな話もありました。
記事をよく見ますと、その裏には北海道生協連による綿密な調査が背景にあった。そこで川原さんのお名前が出てきて、同一地域内に、灯油で例えると「リッター100円と200円が混在しているような状況だ」というような資料を出されていた。あまりに価格差がおかしいということで、経済産業省が本気で動き出したわけですよね。
そして、当時の経済産業大臣の萩生田さんが定例記者会見で、朝日新聞の一面の報道について記者の質問に答えています。そのきっかけを作ったという意味で、川原さんの活動は非常に意義が大きいと思っています。
川原 北海道生協連の事務局長をしていた時、エルピーガス振興センターが経済産業省から委託され、各エリアで開催しているLPガス消費者懇談会に出席した際に、違和感を覚えたことは忘れもしません。
北海道生協連のコールセンターには、料金が不透明だとか、解約しようと思ったらトラブルになった等のLPガスの苦情が多数寄せられていましたが、懇談会ではLPガス事業者に耳障りの良い言葉ばかりで、そういった料金問題等の話題は皆無だったからです。
北大生協ではアパートやマンションの斡旋事業もやっており、そうしたなか、北大生協が斡旋した学生の親御さんから苦情の電話がありました。「キャンパスからも近くていいお部屋を紹介してもらって、息子も喜んでいたけれども、2カ月後にLPガスの請求書を見てびっくりした」と。
九州の親御さんなんですが、「九州の相場からすると、2倍近い料金。生協ともあろうものが、学生に部屋を紹介するときに、これはLPガス物件なので平均的にこのぐらいのガス料金が掛かりますよと、なぜ事前に知らせてくれなかったんだ」と。これはね、まともな意見なんですよ。
北大生協の理事会でもこのことを問題視して論議しました。法律では事前に知らせなければならないなどの規定はなかったので、先行的に部屋を斡旋する時には、LPガスの料金を知らせようという取組みが始まったわけです。
オーナーとLPガス販売事業者に協力いただき、この物件は「オール電化ですよ」とか「LPガス対応の物件で、LPガスの料金はこれくらいですよ」と、事前に料金を知らせることにしました。
これは、組合員の生活を守るという目的ですが、学生の親御さんの要求がそもそもの切っ掛けだったと言えます。そういう意味では先進的だったかもしれませんね。
これらの取組みに問題意識をもった資源エネルギー庁の当時のLPガス担当の企画官が「ちょっと見に行って話を聞きたい」と連絡があり、実際に北海道を視察に訪れました。
その後、それらの問題はトントン拍子に議論され、2017年の液石法一部改正とガイドライン制定につながりました。しかし現状は、「法律はできたが、事業者は守らなかった。
行政は守らせられなかった。社会と消費者は許してしまった」と。この反省から、LPガス問題を柱に活動を広めていったわけです。
境野 川原さんがおっしゃられたように2017年にガイドラインができましたが、実質的に守られているのは14条書面の交付ぐらいです。北海道の動きは多分初めてで、全国的にもあまりない取組みだったと思うんですよね。この頃から「LPガス問題を考える会」というのがあったんですね。

川原 「LPガス問題を考える会」の立ち上げは2015年です。LPガス料金問題に関する地道な調査と分析で、エビデンスを示すことができたのが大きかったと思います。そういった地道な調査が国を動かす切っ掛けになったと思っています。
国際大学の橘川武郎学長からは、「北海道生協連や神奈川県消費者の会などの消費者運動が行政を動かし、法律を変えさせたという事実は、この間なかった消費者運動の成果だ」と評価を頂いています。
境野 同感ですね。やはりどのような仕事でもそうですが、そこに問題意識を持った人がいるかどうかなんですよね。一方で単なる作業だと思って批評、批判しかしない人も中にはいます。
橘川先生は「私は学者というより運動家なんです」と常々仰られていますが、先生を中心に様々な人が問題意識を共有し、声を上げたからこそ、ここまでの炎が上がったと思っています。
その意味では、今回の商慣行是正に向けた動きは、30年に一度の大改正と言われており、きっかけを作ったのが、川原さんをはじめ民間からという意義は非常に大きいと思いますね。
実態調査から見えてきたものは-消費者への情報提供必須
川原 北海道生協連の調査結果の数字を見た時は驚きましたね。わずか1.5キロから1.9キロの範囲という狭いエリアの中で、ガス料金に2倍もの差があると。どう説明すればいいのでしょうか。合理的な説明は出来ないんじゃないですか。
境野 できないですよね。私も大手石油会社に20年以上勤めていましたが、ガソリンの価格をみても、今はだいたい150円から180円くらいですよね。
これがもしLPガスの世界のように、同じ地域で「100円の店」と「300円の店」があったらどうなりますかということです。「変でしょ?」と、もっと声を上げてもいい。
残念ながらLPガスの価格というのは、ガソリンスタンドや電気のように看板で公示されていない。そこを何とかできないか、消費者に分かり易く伝えられないかという問題意識は常にありますね。
川原 この十数年間、LPガスの料金問題などを勉強する中で感じたのは、電気料金や都市ガスは公共料金の時代があり、値上げの際は審議会を開いて決定していました。
全国をブロックに分け、消費者代表も参加して、「役員が多すぎる」「給料が高すぎる」といったことまで議論され、積み上げ方式で厳格に価格は決められていました。
境野 かなり厳しい目で見られてきたわけですね。
川原 一方でLPガスは「自由市場の自由料金」という建前のもと、さじ加減一つで決められてきたような気もします。今年の調査でも、昨年4月に液石法の改正施行が完了しましたが、改正以降の9月と10月に料金表を集めて分析を行っても、傾向は以前と全然変わっていませんでした。

過大投資の償却費用を料金に上乗せしていたことを認めたわけですから、それが何らかの形で下がってくることを期待したのですが、下がっていません。この「下がっていないこと」をどう説明するのか、経済産業省も頭を抱えているのではないでしょうか。
境野 本来なら、設備費用の計上が変わることで安くなるはずですよね。
川原 これだけ「透明化をやれ」「法律を変える」と言って改革したのに、実態調査で何も変わっていないことが露見し、もしこれが一般メディアでスクープされたら「何をやっているんだ」という話になると思います。
境野 そうですね。そして1万5千以上もある事業者のうち、全体の66%を占める、昔気質で少人数でやっているような小規模事業者の意識を変えるのは、相当時間が掛かるなと改めて感じています。
「自己適合宣言」の地域差
境野 川原さんがおっしゃったLPガス事業者への省令改正の浸透度合いですが、今回の「自己適合宣言(自主取組宣言)」の結果に如実に現れています。
昨年6月に都道府県別の数字が出てきたときに、ものすごい地域差があるなと感じました。例えば、大分県は100%なんですよ。これは明らかに全国LPガス協会の山田会長による強力なリーダーシップによるものです。
一方、秋田県と沖縄県も宣言率70%超えと高くなっています。両県の専務理事にお会いしましたが、問題に対する熱量がものすごく高いんです。沖縄県は「全国平均の提出率が18%なんて、業界がダメになる」と声を上げています。先頭に立つ人の影響は大きいと言えます。
もう一つ言うと、宣言率が低いところは「三部料金制」が徹底されていないと思われ、見事にリンクしています。宣言を出していない、一万件を擁する大手事業者に伺った際、その経営者から「三部料金は義務化されたんですね?」と聞かされた時は驚きました。
「もう6月ですよ、何を言っているんですか」と。案の定、当局に注意を受けたとのことですが、宣言率が低い地域はそういう状況が共通していると思います。
一方、国も各自治体に指示命令できるかというと、組織が意外とフラットなので、地方の経済産業局に対しては「命令」ではなく「お願いや依頼」になってしまうという問題を感じました。
川原 昨年4月に神奈川県消費者連絡会(NPO)のメンバーになったのですが、そこで神奈川県内事業者の自己適合宣言の調査を実施しました。
神奈川県は588社あるうち、宣言しているのは56社。そのうちホームページに掲載しているのは31社です。全体の比率からすると5.3%しかありません。
宣言を消費者がどのように確認するかと言えば、店頭表示なんて見に行きませんから、もちろんホームページで確認するわけです。埼玉は1,350社あって宣言は365社と増えましたが、ホームページ掲載は57社で4.2%しかありません。この状態はいかがなものかと。
境野 ただ事業者側に立った言い訳をしますと、LPガス事業者の1万5千社のうち66%が500件未満の小規模事業者なんです。「そもそもホームページを持っていない」というところもすごく多いんですよ。
やはり、全国LPガス協会による継続的かつ強力な各県協への指導が必要だと感じています。割合が一向に増えないところは、協会長と専務理事を交代させるぐらいの勢いで、宣言提出を強力に遂行して頂きたいと思っているところです。

川原 小規模事業者にホームページがないということは理解しています。資源エネルギー庁や業界団体も、ホームページを持っていない事業者を救済してどのように消費者に伝えるか、もっと知恵を出すべきです。
そもそも自主取組宣言をすることになった経緯は、「長い間の悪しき商慣行で消費者に迷惑をかけてきた」という反省から。襟を正し、消費者に理解してもらうための宣言のはずです。だから消費者に分かりやすい言葉や内容で宣言しないと意味がありません。
多くの宣言は、「法律を守ります」「過大投資しない」「三部料金制にする」「情報提供する」という項目程度で、中身がありません。「言われたから出しました」としか思えない。消費者の理解や共感を得る内容になっていないものが圧倒的です。
境野 「行動計画が伴っていない宣言に意味はない」と私も思っています。せめて1万件以上の顧客を持つ275社は、アクションプランを添付して公表するべきです。「どうやってオーナーを説得するか、契約を破棄するか」タイムテーブルに沿った計画があって然るべきだと考えます。
しかし残念ながら、一部の大手事業者の中にはとても「宣言」とは言えないようなものを公表しているところがあります。また、取組宣言の掲載がホームページのどこにあるか分からない、例えば最後の最後に、小さい三行ぐらいのPDFがポロッと出てくるようなものもある。
神奈川県協会の髙橋宏昌会長がワーキングで一部の大手事業者に対し、「言葉が過ぎるかもしれないが、襟を正して見本を見せて欲しい」と仰っていますが、とてもではありませんが、見本を見せているというような状態にはありません。
「コンプライアンス遵守」は当たり前-問題は実効性の確保
川原 LPガス事業者は事業の多角化が進んでいて、ホームページには色々なことが書かれています。だからこそ「LPガス」という中項目を作って、そこをクリックすれば「標準的料金メニュー」「取組宣言」「三部料金制の導入状況」等が分かりやすく出てくるような構成にして頂きたい。
都市ガス事業者は、きちんとした項目立てで、原料費調整制度も毎月更新して分かりやすくやっています。
やろうと思えばできるはずなのに、意識がないというか、消費者に教えたくないのかと勘繰りたくなるほど見えなくしています。自主取組宣言も「やった」という事実だけで、内容が消費者の理解に繋がっていないことが今回の調査で分かりました。
境野 ホームページを開いても消費者が辿りつけなければ意味はありません。どこにあるの?という感じでは、情報提供しているとは言えないでしょう。
一部の事業者には、「全L協のホームページに名前が載ることに意味はない」と言う人もいますが、私は「これはそこに載せるための宣言ではなく、業界を良くするという、己に対する宣誓なんです」と言っています。
全L協の山田会長も「自己適合宣言を出さない事業者は、法律を守らないと言っているのと一緒だ」と発言されていると聞きました。
境野 自己適合宣言の宣言率をみると、京都府や山形県、埼玉県、愛知県、香川県、愛媛県、佐賀県、宮﨑県などは大きく改善していますが、全く伸びていない県もあります。
あまり競争がない無風の地域というか、「うちは競争がないので三部料金制も必要ありません」と、平然としている事業者も中にはいます。

ただ今回、去年の12月23日に出た最高裁の判決で、配管代は設備料金として分けないと請求権が無くなると、三部料金の徹底が司法でも指摘されましたので、全ての事業者が漏れなくやらざるを得なくなったと思います。
川原 私はこの十数年間、LPガス問題に関わってきましたが、LPガス業界は、経営の近代化が遅れているのではと、感じています。
コンプライアンス経営、社会貢献、環境問題、消費者目線で考えるといった発想や訓練をほとんどしないまま、ここまできてしまった。業績を上げてきた一部の大手事業者は「今だけ、自分だけ、金だけ」みたいな……言い過ぎかもしれませんが。
境野 一部の大手事業者は、「コンプライアンスを徹底します」「過大な投資はもうやりません」と宣言している一方で、現場では「数字を取ってこい」と社員に発破をかけています。
法令を遵守せよと言いつつ、ガバナンスができていない。数字を絶対に落とすなという営業ノルマで現場は板挟みになり、無償貸与などを強要してくる不動産屋やオーナーなどと手を切れない、それが実態だと思います。これは明白なガバナンス不足の結果だと言えるでしょう。
地方に行けば行くほど大手事業者が悪さをしているのはよく聞く話で、切り替え勧誘のチラシが堂々と撒かれていたり、法外な安値がまかり通っていたりする。
そして、改正省令を守り、真摯に取り組んでいる事業者からは、「悪質なLPガス事業者や不動産事業者の行為を通報フォームに上げているのに反応もなく、機能しているのかどうかが全く見えない」、「一社でもいいから悪質事業者の社名を公表するなりしてくれれば、同様な行為をしている事業者も大人しくなるのに」という声が多く聞かれます。
通報フォームの中から悪質行為の多い事業者を抽出し、液石法や特商法など各法体系に照らし合わせて違反事業者の炙り出しと厳正なる法執行を実施することが必要だと考えています。
川原 制度改革に期待し通報フォームに情報を提供している事業者の中には、「協力しても無駄なのか」と諦めムードもあるようです。
一方、グレーゾーンと思われる判断で様子を伺っている一部大手事業者には、お墨付きと捉え、既成事実になってしまうと、危機意識をもつ事業者は多いと聞きます。
事態の深刻度合いの認識度と、現場が求められているスピード感において、資源エネルギー庁と現場では温度差がありそうです。もっと情報交換と意見交換が必要と感じています。
境野 燃料流通政策課室はここのところ暫定税率などガソリン関係で大忙しだったようです。補助金等と違って税制なので、左右前後斜めの整合性が合うかどうかの検証もやり切らないと穴ができます。
「何兆円」という国税を扱っているわけですから。また、高市首相が所信表明演説で何度もこの件に触れ、答弁作成の協議、大臣や議員へのレクチャーも幾度となくあり、経済産業省の中でも注目度がマックスの中にいたわけです。

衆院本会議で法案が可決し、ようやくそれらに一定の目途がついて、1月からはLPガス行政に最優先で取り組むという、甲元室長の言葉も直接聞いています。彼と話していますと、「ガソリン減税関連で着手できていなかった、特に事業者の心の声でもある通報フォームの分析、これを徹底的にやっていきます」とかなり気合が入っており、前任の日置さんが作った土台を引き継いで発展させようとされています。今後の燃料流通政策室の動きには、大いに期待したいですね。
求められる意識改革-「立ち入り検査」の実態は
川原 今回、行政の検査体制についても調べています。そうしたら驚くべきことが分かったんです。LPガス販売事業者の立ち入り検査を行っているのはどこの部署かというと、実は8割以上が消防関係の部署なんです。多くの自治体でそうなっています。
さらに、その検査員に向けた研修プログラムを見てみると、例えば24コマある講義のうち、今回の法改正の核心である「取引の適正化(商慣行是正)」に関するコマは、たった1コマしかないんです。それで複雑な新ルールをチェックできるのでしょうか。
しかも、実際に検査に行っても「書類があるかどうか」を確認するだけで、内容が適正かどうかまで踏み込んでいないと聞きます。
境野 私も以前、ある地域の行政担当者が「設備料金をゼロにしなさい」と、とんでもない指導をしているのを聞いて呆れたことがあります。
「そんなことはどこにも書いていない、「ゼロにしろ」なんて誰が言ったんですか」と。パブリックコメントの国の回答に「事業者の算定基準に委ねると書いてあります」という添付文書を付けて、厳重抗議文を送るよう事業者に助言しました。

送付したところ、間もなく謝罪と言いますか、「そちらの算定方法でも問題ありません」というような回答が届いたとのことでした。現場の検査員がルールをきちんと理解していないことも問題だと思います。
経済産業省が策定したマニュアルをもとに、実際に立入してチェックするのは都道府県、政令指定都市といった行政機関です。そこに一本筋の通った統一感と言いますか、基準にバラツキがあってはいけないのだと思いますね。
川原 総務省の行政評価局が2018年に調査しています。例えば標準的料金の公表の調査で、公表したと言っているが、公表の実態がない事業者が多数見つかっています。
結局、国がいくら立派な法律やマニュアルを作っても、現場で検査する人に権限や知識、そして「悪質業者を許さない」という意識がなければ、ザル法になってしまいます。
境野 そこは資源エネルギー庁の担当官も悩んでいるところです。「地方自治法」の壁があって、国が自治体に強く命令できないと。だからこそ、分かりやすくて現場の検査員が迷わずチェックできるような「統一マニュアル」が必要だと思っています。
ご指摘されたように、保安はやってきたけど、取引適正化や商慣行のことはまだよく理解していない、分かっていない場合が多いようです。
今回の省令改正に伴う、立ち入りなどによる十分かつ的確な指摘は、まだまだ浸透していないということが言えると思います。
立入検査を行うに当たり、特にどこに重点を置くべきか。それは、「無償貸与契約がありながら設備料金をゼロとしている事業者」に対して、有償契約への切り替えを誘導していくなど、実効性確保に繋がるような形に整備していくことが重要だと考えています。
川原 事業者の対応を見ていると、アジェンダ的な文言を先頭に掲げてはいるものの、肝心の「三部料金制」や「設備料金ゼロ」といった本質的な部分は骨抜きにされつつあるように見えます。
チェックリストも、みんな均等に「チェック、チェック、はい終わり」と、形式的に処理しているだけになっていませんか。
境野 おっしゃる通りですね。「これで私の仕事は終わりました」では困るんです。
上司もそれを見て「この項目が抜けているぞ」程度の指摘だけでは駄目で、「三部料金や設備費用の透明化が出来ていないじゃないか」と徹底的に疑わないといけません。今のままでは、改正省令を施行した意味がありませんでしたという結果になりかねない。

川原 地域差も激しいですね。やる気がある地域と。
境野 以前、ある県協が県として「自己適合宣言」を出そうとした際、県協会の会員の意見が真っ二つに割れたそうです。結局うやむやになってしまったとのことでしたが、「もうやっていません」と言っている一方でこれでは、ということですよね。
川原 近江商人の「売り手よし、買い手よし、世間よし」という「三方よし」という言葉があります。買い手だけでも売り手だけでもなく、社会、世間も良いという精神を示唆するものです。
また、経営学者のピーター・ドラッカーも「企業の目的は利益を上げることではない。目的は顧客を創造して社会に貢献することだ」と言っています。
LPガス業界は、何十年も悪しき商慣行で甘い汁を吸ってきた体質を治さないといけません。家庭用エネルギー大競争時代において、地域に根ざし、消費者から支持される業界にならないと生き残れません。意識改革がすごく大事です。
上杉鷹山の「改革には3つの壁がある」という話があります。「制度の壁」「物理的な壁」、そして一番厄介なのが「意識の壁」です。制度の壁は突破しましたが、それを守りやり切ろうという意識改革の浸透が重要になります。
境野 三方よしの考え方はいいですね。今の日本の大手事業者がやっているのは逆で、利益追求が先になっています。一度、徹底的に痛い目に遭わないとダメなのかなとも思っています。
そして一方では、良くなりつつある事業者も多く出てきています。当たり前ですが、コンプライアンスを重視し始め、「このままではまずい」と事業者が気づき、きちんとした体制を構築していこうという動きが出ています。
そういった好事例を大きく取り上げて、LPガス業界が健全に変わってきたという流れを作っていきたいですね。
川原 消費者としてLPガス事業者には、家庭用エネルギー大競争時代のなか、多くのLP事業者が悪しき商慣行を反省し、「地域に根差し消費者から支持されるLPガス事業」を望んでいるいと期待しています。
以 上
