昨日の「残存費用等請求事件」の続きですが、判決文の最後に、林道晴・裁判長裁判官による補足があり、これがLPガス業界への「超」重要なメッセージでした。
① 何についての意見か
この補足意見は、LPガス業界で長年行われてきた「無償配管(貸付配管)」という商慣行が、消費者契約法上どう評価されるかについて述べたものです。
➁そもそも「無償配管(貸付配管)」とは何か
戸建住宅の建設時にLP会社が屋内配管工事を無償で行うが、その代わりガス契約を途中解約すると、配管費用を一括請求されるという仕組み。
➂この慣行の問題点
この慣行には、次のような問題があると以前から指摘されてきました。
👉ガス料金と配管費用の関係が不透明
👉解約時に高額な請求が突然発生
👉消費者がLPガス会社を自由に選べなくなる
結果として、取引の公正さを損なうことから、経産省や公取委も是正を進め、2024年7月改定の取引適正化指針では「無償配管を行わない方向が望ましい」と明記されました。
➃最高裁判決の結論
この判決は、「途中解約時に配管費用を請求する条項」は実質的に違約金条項にあたる。よって、消費者契約法9条1号により「全部無効」と判断しました。
➄なぜ「無効」なのか
裁判所が重視したのは次の点です。
・LPガス会社は多数の契約を前提に、全体でリスク回収できる立場であるにもかかわらず、
👉 配管費用とガス料金の関係をあえて曖昧にし
👉 特定の解約者にだけ費用を押し付ける仕組みを作っていた
・これは
👉 「平均的な損害」を超える不当な請求と評価された
➅ただし「すべての配管費請求がNG」ではない
この補足意見は、重要な留保も述べています。
・屋内配管の所有権が家主にあり
・三部料金制(基本料金・従量料金・設備費)を明確に分け
・月々の配管費用を透明に請求している場合
👉 今回の判決は当然には及ばない
⑦ 今後の方向性(結論)
・2025年4月施行の省令改正で 三部料金制が義務化
・今後LPガス事業者は配管費を含めた料金の完全な透明化を徹底すべき
・無償配管+解約時一括請求という旧来の手法は法的に極めてリスクが高い
つまり、三部料金制にして配管は設備費として外出しせよ
と、そうしないと請求権はないですよと、そういうメッセージなわけです。従って、まだ三部料金制に移行していない中小事業者の方々は、これを機に急いで移行されるよう、お願いする次第です。
【補足:消費者契約法9条1号】
(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
次の各号に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
当該消費者契約の解除に伴い、事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える違約金を定め、又は損害賠償の額を予定する条項
今回の件に照らし合わせて分かり易く言いますと、「事業者は、ビジネス全体で回収できるはずのコストやリスクを、たまたま途中で解約した消費者一人にまとめて押し付けてはいけない」と、いうことになります。


