昨日、サイサンの講演会に呼ばれまして、「また仲間になった会社が増えたな」と感じ入ったところなのですが、一方である大手上場ガス会社は、半期のM&Aで得た件数は1,700件とかなり少ない。この差はどこにあるのでしょうか?
その答えを持つ会社が、別の業界にありますので、今回はその会社を紹介したいと思います。会社の名は「セレンディップ・ホールディングス」。ものづくり企業の経営支援に特化した事業投資会社なのですが、基本的にこの会社のM&Aは売却を前提としていません。
M&Aというと、「安く買って高く売る」という、エグジットを目的としたものをイメージしがちです。
しかし、セレンディップは短期的な売却益を狙うのではなく、長期的な企業価値向上を目指し、「一緒に成長していこう」というスタンスを堅持しています。
買収先の企業の社長がこう言っています。「私が最も惹きつけられたのは、グループインした企業における人材育成の実例でした。若手社員が成長を遂げて、他のグループ会社で社長を務めてもおかしくないほどの人材になっているとお聞きして、興奮を隠せませんでした」
前に川本知彦さん(株式会社サイサン代表取締役社長)に取材させて頂いた時の記憶が蘇ったわけですが、まさにこれサイサンウェイなんですね。
人を切らずに、お互いの良いところを吸収し合って一緒に成長していこう、そして将来の幹部候補社員を買収先の社長として出向させる。そのまま経営をやってもらうケースもあれば、経営をお任せしたいという会社もある。
その場合はサイサンから社長を派遣しているわけですが、とあるグループインした企業のオーナーがこう言っていました。「自分では会社の文化を変えることができなかったけど、サイサンのお陰で蘇った、生まれかわった」と。
セレンディップの竹内社長がインタビューでこう答えています。「いくら財務数値が良くても、経営に対する考え方が合わなければうまくいきません。(買収先企業の社長と)初めてお会いした時から、具体的なシナジーの話で盛り上がりました」
そうなんです、やはりM&Aには
相互リスペクトが基本
なんですね。相手先の方も「竹内社長の経営哲学に感銘を受けました。日本の製造業を本気で変えようという情熱、そして私が感じていることと同様の現状への危機感が、言葉の端々から伝わってきました」とのことで、最後は人と人の信頼関係が大きい。
逆に言うと、M&Aを成長方針に掲げておきながら、それが思うように進まない大手上場会社は、相手に対するリスペクトの気持ちが希薄なのではないか、同業他社からの信頼が薄いのではないかと思うわけです(最も、現にそういう面が競争の現場では多々感じられるという声が多いです)。
買収先に受け入れられるM&Aとは、お互いへのリスペクトを前提とした、売却を前提としない共同成長歩調を取る-これに尽きると思います。


