メルマガでも臨時号としてお送りさせて頂きました、山口県宇部市の大規模ガス漏れ事故。
都市ガス関係者の方々が異口同音に「考えにくい事故」と仰っていたのは、「圧力が上ること」が想定外であるとのこと。
整圧器であるガバナの圧力異常によって、家庭に通常の12倍の圧力のガスが送られてしまいました。
結論から言いますと、一般家庭のガス機器は低圧向けに設計されている為、12倍もの圧に耐えられません。
何が起こるか、起こり得るかと言えば、調圧部・バルブ・シールの破損、バーナー部の異常噴出、そして点火すると異常に大きい炎が出て器具本体が炎に包まれると、火災リスクが極めて高くなります。

航空会社で言うところの「重大インシデント」に該当するわけですが、「この程度の被害で済んだのは奇跡的」と、爆発事故も起こらずに小規模の火災で済んだのは、朝の6時でほとんどの家で人がいた時間帯でしたので、すぐに消せたということだと思います。
事故の原因、すなわちガバナの圧力異常の原因はまだ分かっていないものの、非常に気になったのが
宇部市から譲渡された地域ということと、ガバナが1980年製だということ
自治体が運営するガス局の設備は、その多くで老朽化が進んでいます。公営事業は料金を安く抑えつつ公共性を重視するため、設備更新投資が後回しになりやすいのです。
さらに議会承認や行政手続きが必要で、更新計画の決定に時間が掛かりやすい。知り合いの都市ガス会社の友人に聞いたところ、「1980年製?今から45年前?そんな古いのはさすがに使っていない」とのこと。
都市ガスのガバナの一般的な設計寿命は20~30年が実務上の目安と言われています。国内メーカー(フジキン、日立金属、岡野バルブ等)の資料でも、「20~30年で更新」を前提にした設計・保守体系が採られています。
複数の都市ガス会社では、ガバナステーションの設備更新の標準値として、
20年:主要整圧器の更新推奨
25年:更新計画に必ずのせる
30年:原則として更新完了
という基準を採用しているとのことです。
地方公営ガスでは40年以上使われている例もありますが、内部部品交換、3~12ヶ月の定期点検、立会検査、圧力記録計の監視などを強化して延命しているだけで、本来の設計寿命を超えて使っているという扱いになります。
ですので、原因調査が待たれるところではありますが、やはり45年というのは、設備更新の必要があったのではないかと、強く思うところであります。






