月刊LPガスの11月号で「近畿地区LPガス業界の現況と課題」という特集が組まれておりました。1989年から2025年までの近畿2府5県の世帯数とLPガス消費世帯数の推移が非常に興味深いのですが、
1989年→2025年
全世帯数:7,047,570→10,371,760【+3,324,190】
LP世帯数:2,334,522→1,757,656【▲576,866】
36年間で世帯数は300万以上増えたのに、LPガス消費世帯数は60万近く減っています。
これが何を意味しているかと言いますと、既存LPガス世帯が、オール電化か都市ガスに替わったと、こういう事実を示しているわけです。
LPガス消費世帯の割合は、33.1%から16.9%にまで減少、全国平均の36.9%の半分以下という状況。
この原因は特に都市ガスとの価格差であると、特に大阪ガスは安いので料金差は1.8倍ぐらいあると、その要因を価格に置いているわけですが、私はこの関西のLPガス世帯数の減少は、関西圏の特殊事情にあると思ってるんです。
それは、関西電力と大阪ガスの存在です。
それぞれに友人がいるわけですが、この両社は面白いという言い方は失礼かもしれませんが、お互い大企業でありながら“ガチバトル”を繰り広げてきています。特に電力・ガスの自由化以降はもう、本当に“仁義なき戦い”。
電力自由化は都市ガス会社にとっては、今まで導管供給先をオール電化に奪われてきた、まさに電力会社への復讐戦。
特に東京ガスは1年以上前から用意周到に準備を進めてきたこともあり、各社の先頭に立って電力顧客を獲得していきます。そして大阪はもう、マジ喧嘩でした笑。
関西電力と大阪ガスの仲違いの切っ掛けは、関電いわく「LNGを卸してあげてたのに、勝手に基地を作って輸入し始めた」とか、大阪ガスに言わせると「いやいや、LNG供給で嫌がらせをしてきたのは関電」とか、原因は定かではありませんが、企業規模がそれほど大きく違わない上に供給網が重なるんですね。東京電力と東京ガスの構図とは全く違うわけです。
電力自由化が始まった年、居酒屋で大阪ガスの友人が店主をつかまえて言うんです。「電気が大阪ガスからも買えるようになったの知っとります?今ならガスとセットで関電より全然安いでっせ。電気代いま幾らですか?シミュレーションすぐ出ますわ」と、その場で営業(笑)。「すごいなー」と私は隣で見てました。
大阪ガスは社内圧が凄くて、副社長が毎週、部門ごとの電力獲得状況をチェックして、獲れてない部門長に発破をかけていたとのこと。
また、ワースト3位ぐらいまでの部門長は、社長以下役員の前で「なぜ獲れなかったのか」を説明させられるとのことで、皆さん命懸けでやっておられた感がありました。
で、都市ガス自由化が始まったら、今度は関西電力が「関電ガス」の一大キャンペーン。2017年は近畿でテレビコマーシャルが関電ガス一色かというほどになりましたね。
凄まじかったのは大津市ガス局の入札。大阪ガスは都市ガスの卸供給先でしたから、メンツにかけて獲りにいきました。かなり高い札を入れて関電に競り勝って落としたわけですが、関電が凄いのは落とされた翌日に、
大津市で関電ガスの本格提供開始というプレスリリースを出した
んです。やられたらやり返す、まさに半沢直樹の世界。-というわけで、関西圏におけるLPガス世帯の減少の根源的なところはですね、この二大巨頭が命懸けの喧嘩をやらかしている影響が、かなりあると思うわけです。
お互い、電気と都市ガスを取り合いしている中で、LPガスもガンガン食われていってしまったのではないかと。
ただでさえ、お金にはシビアな関西エリア。LPガスの生き残り、何とか踏ん張ってもらいたいところです。


