消費者契約法と特商法

さて、この消費者契約法ですが、言うまでもなく「消費者を守るための法律」です。消費者と事業者の情報量および交渉力に「構造上の格差」があることに鑑みて、消費者がその内容を正確に理解していたしても無効とするものです。

2019年には消費者契約法が改正され、第10条に「消費者の不作為(消極的行為)をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項であって消費者の利益を一方的に害するものは無効とする」という例示が規定に追加されました。

松山弁護士に確認したところ、「LPガス事業者が消費者に対して無償貸与や貸付配管の契約内容を詳しく説明し、消費者の理解を得たことを確認する措置を取ったとしても、その内容によってはその条項は無効となります。したがって、貸付配管のことが契約書に小さく書かれているだけで、消費者が確実に理解していると言えないような状況であれば、貸付配管の条項は無効であり、それまで支払った配管代の返還請求が可能となる可能性があります」とのことでした。

例えば三部料金制での請求において、
お客様:「この設備料金ってなに?」
事業者:「今まで基本料金に含まれていたガス消費配管貸付料の月額換算金額を、法改正によって外出し表示することになったんです」
-ここで「ああ、そうなのね」と納得して頂ければ問題ないのですが、
お客様:「ガスの配管を借りてるの?私が?ウチに付いているものなんじゃないの?そんな説明、聞いてない」

※ここで裁判になると、民法の附合の問題(=配管は家に強く附合して既に消費者のものであり、事業者が売ったり買ったりすることは原理的に不可能、という判決例)で事業者が敗訴になった事例が多い

事業者:「配管代がガス料金に含まれていることは、契約書にも記載しておりますし、お客様も押印して認めておられますので・・」
お客様:「そんなのいちいちちゃんと読んでないし、説明もなかったじゃないの!知らずに配管代なんて払ってたわけ?返してよ!今までの分!」
-こうなった場合、消費者契約法では「貸付配管の条項が無効になる」可能性があり、仮に裁判になれば事業者が敗ける可能性が高いということになります。

従いまして、私の意見としては、まずもってお客様に丁寧に説明責任を果たすこと、説明内容については社内でコンセンサスを形成しておくこと、そして万が一、お客様と貸付配管代で揉めるようなことがあった場合は、争わずに個別に対応をしていくこと、これが結論になります。

また、特商法については今さら注意も何もないのですが、さきのLPガス会社の社長が逮捕された「ハローG事件」について言えば、代理店による不実告知、すなわち「今のガス会社は無くなるのでこちらに替えた方がいい」との勧誘による切替は論外ですが、ハローGに関して言えば、

・法定事項(ガス供給の期間、代金の支払い方法)が記載されていない不備のある書面を交付
・クーリングオフに関する説明を故意にしなかった

ということで、十四条書面がいかに重要なものかを忘れ、軽視していたとしか受け取れない対応です。このようなことのないよう、他山の石として頂きたいと思います。